凡夫の叙情とエッセイ

頭で考えたり心で考えたりして書き散らす

プライド。あるいは敬意。

 恥じない理由を探している時間の多い人生だったと思う。そしてこれから減っても、中々なくなりっこないだろうとも思う。
 僕は洋服が好きだ。しかししばしば「自分なんか」という考えがもたげる。自分の容姿を好きではないし、所謂センスという点においても「安くはない金を払って着る服を着こなせてるのか」なんて事をつい考えて恥ずかしくなってしまう。
 またあるいは、にわかに何かを好きになる。特に理由もなく花の小物なんかを手に取ったり、高い食材に喜んだりする。
 花の名前も知らず、舌も肥えちゃいない。そんな事を思って恥を覚える。
しかしいつ頃かは、そう思う自分に気づいてあげて、仕舞えるようになってきた。
 いつ頃か、人は自分が思うよりも勝手に生きているのだと知ったし、なにより僕自身が体験をする事こそが僕にしかできない事だと思った。
 大した理由や、知識がなくったって「なんかいい」「雰囲気」そんな間抜けな気持ちで選ぶ事は自分を育てるのだと知った。
 なにかと恥じてしまうから、恥な理由を探してばかりいた。
 そうして僕は何かの入り口に立つのが下手だった。